津波避難シェルター

山崎しんのすけ

2012年12月28日 14:35

(12月20日視察報告を兼ねて)


山口県下関市に所在する㈱ニシエフさんを訪れた。

ここは、本年10月に浜松市内のさざんか保育園に津波対応シェルターを
納入したことで広く知られることとなった会社であり、
FRP(強化プラスチック)技術を得意とし、船舶や救命艇、特殊艇を扱う中小造船会社でもある。
創業は1971年で近年の年商は約20億円。

技術屋出身の社長を中心に生き残りをかけて創造的な事業を手がけており、
その最たるものは「フリーフォール型救命艇」。


高さ30メートルからの落下に耐えられる世界最高峰の技術を有しており、
迅速で確実な緊急安全回避ができるように、日々ライフボートの本質を追求している。


さて、今回の視察の目的は上述の「津波対応シェルター」。


救命艇を手がけているのは国内で2社だけということもあり、
さざんか保育園の要請を受け、ニシエフさんが2艇を急遽作り上げた。
これは、40年以上の実績と世界に3500隻以上を送り出していて、
かつ個別受注生産を得意としている当社だからこそ実現した賜物だ。

お値段は2艇で約1200万円と決して安くはないが、遠州灘海岸にほど近いところに
位置する保育園としては、防災対策上、わらにもすがる思いで購入されたに違いない。


実際、東日本大震災で、私たちは津波の恐ろしさをまざまざと見せつけられた。
そして今後起こるとされる南海トラフ巨大地震では、それを上回る大津波も十分に予想される。

津波対策の最優先は、高台に逃げること、あるいは防潮堤のようなもので防ぐことであるが、
浜松のように平野が続く地形では、津波避難タワーやビルを利用したとしても、
全ての人々を収容するには足りない。
ましてや、今回のケースのように保育園に通う園児や、高齢者、障害者を
津波が到達する前に速やかに誘導できる保証はどこにもない。

そこで、そうした避難が困難な人たちへの一つの選択肢として、
救命艇なるものの有用性がクローズアップされてきたというわけである。

説明によれば、耐震性や耐火性は問題ないと言うが、ただ現在のところ、
このシェルターの法的位置づけは曖昧なままである。
よって、四国運輸局を中心として協会基準なりガイドラインを作成すべく検討を重ねているというが、
その基準によっては、せっかく納品した今回のシェルターを再び改造しなければ
運用できない状況になるかもしれない。

しかしそのような状況でも、いち早く行動に移されたさざんか保育園の意識の高さと
決断力を高く評価したいと思うし、また今後、津波から命を守る一つのツールとして、
こうしたシェルターが普及されるよう関係部局に働きかけて参りたい。


※なお、この津波対応シェルターを紹介している映像がYOUTUBEで見られます。
http://www.youtube.com/playlist?list=PL569FDD590778ADB4&feature=mh_lolz


上述のように、法的な基準が定まってない以上、こうした津波対応シェルターを
補助金などを付けて普及させるには時期尚早かもしれないが、製造元を伺うことによって
その有用性はしっかりと確認できた。

また、費用対効果の上でも、津波避難タワーを1基建設する場合に比べて、
そのコストや土地確保、災害弱者対応の問題など、優れている点も数多い。
(このあたりは、3月に予定している私の代表質問で明らかにしたいと思います)

このシェルターに込められている理念を導入あるいは応用して、
本市においての防災力強化に努めて参りたい。


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